岩塩のほうが海塩よりおいしいと思い込んでいる。
文明社会でも
岩塩を産出し使用している国々であるドイツ〜東欧〜北欧〜アメリカなどを
名乗る料理のレストランは日本には定着していないところを見れば
日本人の味覚に合わないこと明白です。
フランス・イタリア・スペインのラテン三ケ国は、
海塩を使いますから日本人の味覚に合います。
レストランが星の数はどあるのを見ても分かるでしょう。
塩と料理の豆知識
○帝国ホテル料理顧問・村上信夫氏
「私はいろいろな調味料があっても塩が無ければ料理を引き受けません、
塩さえあれば他に何も無くても引き受けます。
○パスタ湯がきは塩味だけでもおいしいぐらいに、
しつかり塩を効かせておかないと後からのソースの味と馴染まない。
○塩は水に入れてもすぐには溶けないが、覚醒剤はバッと溶けるのですぐ分かる。
○同じ白い粉でも覚醒剤や麻薬のような習慣性とは別次元のもの。
塩は幾ら食べても中毒にはならない。
○飲みなれない水で腹こわすことはあっても、
食べつけない塩を食べて腹をこわすことはない。
○塩にほ真っ先にこだわりたいもの。
○良い塩を使わないと素材が生きない、生かされない、素材が泣く。
○優れた料理人ほ塩をてなづける
○良い素材、良い塩は素直だ、料理人を裏切らない。
○塩は料理と人体生理の要。
○塩が少ないと料理に重みがない。味の軽さと塩抜きとを混同している?
○塩は塩を呼ぶ(塩抜きに利用)。
カズノコの塩抜き、カソピョウ、イカの皮むき、わかめの色出しも薄い塩水で。
○塩に勝る調味量は愛情と空腹。
○塩は味のメートル原器。
○料理が上手下手というのは塩使いが上手下手ということ。
○レストランで自然塩を使うことは社会的なイメージとステータスアップにつながる。
○塩代が嵩んで潰れたレストランはない。
○コックが恋をすると味が濃くなる(イタリア)
○塩振り3年。
○種蒔きも尺塩も手のひらが上向きで指の聞から落とす。
○JT塩は食器洗いぐらいにしか使えない。
○JT塩はさじ加減が難しい。
○塩は水に出会って活きる。水に溶かしてみれば味の違いが分かる。
○ミネラルウォーターは賓沢品、塩は必需品。
○塩が無ければ動物は死ぬが砂糖は無くても死なない。
○命=塩。生命力旺盛な人は塩を沢山食べる人。
○舌は極めて保守的なもの、
子供の舌にしみこんだ味はノスタルジアとなっていつまでも残る。おふくろの味。
○官能検査人ほ生まれたときからそのように育てられるのが理想的。
○魚の切り身は塩水で洗うと煮崩れしない。
○スーパーの塩鮭は塩が効かせてないから生臭くて食えない。魚や肉にドリップ
が残ると長持ちしない、臭い。塩が効いていれば骨までしゃぶってもおいしい。
淡水魚にほ独特の泥臭さがある。
○塩漬けサンマなど魚の臭みを取り身を締める。塩をタップり使ってドリップを抜く。
○昔の塩鮭は塩が吹き出したもの。
○魚肉には塩気が少ないから、味がない。
醤油(塩分)をつけなければ食べられたものではない。
体液中の塩分濃度=人間〇・九%、蛙・魚〇・七六%。魚肉の方が塩分が少なく、
塩気が感じられないから刺し身に醤油や塩が要る。
○アサリの砂出し‥
アサリほ河口など塩分が比較的薄いところに住んでいるから砂出しの塩水は
二・〇〜二・五%ぐらいで十分。貝が浸かっていればよく、暗い静かなところに置く 塩水を一メートル以上も飛ばすから囲いが要る。
砂出 し済みを買って来ても念のためもう一度砂出しすることをお勧めします。
○卵を溶くとき塩を一つまみ入れると黄味と白味がムラ無く溶け合う。
○昔は「今夜はえらい喉が渇く」、
「そう言えば今晩は御馳走を食べたわい」と言ったもの
○コンニャク刺し身は塩を振って棒でたたいてから刺し身にする。
○糸ひき納豆ほ塩をかけてから醤油を香り付けにちょっとたらすとおいしい。
○塩は世界中の総ての酒に合う。飲ん兵衛への料理は塩を良く効かせること。
酒は陰性、塩は陽性で陰陽のバランスがとれ健康にも良い。
枡酒、テキーラ、ソルティドッグ、マルガリータ。
○氷を長保ち‥お刺し身の下に敷く氷を塩あべかわにすると長保ちする。
○ビールやワインを急いで冷やしたいときにクーラーの氷水に塩をがばっと入れると
マイナス七度ぐらいまですぐ下がる。氷枕、氷嚢なども氷が長持ち。
○塩にほんの少しニガリが居ると、塩味の角が取れてまろやか。
○塩を必要とする量は一回の食事(調理済み)のときに
卓上塩を追加で振りかけるだけでも、体調によって三〜一〇gぐらいの個人差がある。
○塩で染み抜き‥寿司屋の白木のカウンターなどに醤油を落としたときには、
すぐ塩を置いて濡れた布巾で擦る。乾いたら取れない。
○おこげが癌の原因物質なら、サンマの塩焼きを沢山食べていた江戸時代から
昭和の長屋の住民はみんな高血圧・成人病・癌になっていなければ話が合わない。
おこげスイッチの付いた自動炊飯器はガン製造機になる。
女性は薄化粧、ご飯は薄焦げに如かず。
ジョギングして長生きするのなら、
江戸時代の飛脚も新聞配達もみんな長生きしたはず。
○昔からの農業では「田圃一反に対して塩を一合まく」と言われたり、
海水を畑へ撒いたもの。
○「お米を毎日食べましょう」と農協以下が大合唱しているが、
はかばかしくな い。米・塩・水が悪くてはご飯がおいしくない。
お米・水・塩は毎日食べる月月火水木金金。
農業に下肥を使っていたころは糞便は塩分を含んだ有機肥料で、
土を分解して土壌菌を養い活性化して土が柔らかく力があった。
稲も野菜も今ほど脆弱ではなかったし美味しかった。
今は農薬と化学肥料を使い品種改良という名の変質で
水、塩、土の三点セットも昔とは様変わりし、
したがって野菜も米・麦も変わった。
戦前の米は粗のままで三年保存が出来たが、今は一年も保たない。
塩が民族の体質、パーソナリティをはぐくむ |
どこの国のどの塩が一番よいのですか? 食の基本中の基本は「塩」です。
したがって、塩を語ることば民俗学そのものなのです。
その国の民族が古代から食ベつづけてきた塩で、
その民族のいのちははぐくまれてきました。
ですから、国家間の塩の優劣を論ずることば、民俗の尊厳にもかかわり、
かんたんには語れないのです。
「食」という字は「人」に「良い」と書きます。
まさにそのとおりで、
その国の風土、環境、水、塩がその民俗を育ててきたのです。
その国その国で生きている塩にだからこそ
優劣の順位をつけるべきではないのです。
私は、塩も民俗学そのものだと説いています。
ヨーロッパでも、ドイツでは岩塩を精製した塩が中心です。
岩塩を中心とした食文化があのゲルマン民族とその文化をはぐくんだのです。 |
@粒が大きければ、粒が大きい程、海・山関係なしに
(山から採れた)岩塩と思い込んでいるのが第一ボタンの掛け間違え。
「大粒塩は日本にない、珍しい、手に入りにくい、
希少価値があるなど舶来崇拝の名残でしょうか。
日本人がこれだけ海外旅行をしても、
海外では岩塩は海塩の半値で売られている事を知る人はほとんど居ません。
A岩塩であればミネラルが多いと思い込んでいる。
実際にほミネラルは殆どありません。
シェフは純塩化ナトリウムが良いとは思っていません。
逆に、「JT塩は純塩化ナトリウムで味も良くない、ミネラルがある塩が良い、
岩塩にほミネラルがあるからおいしい」と言ったり書いたりしている人が
いますが知識がちぐはぐです。
学者が味を語り、料理人が成分を云々すると間違うことがあるようです。
B色さえついていれば岩塩と思い込む。
色は塩が出来るときに混じったそこの土の色です。
産地によって茶、青、ピンク、褐色、グレーなどいろいろな色があります。
それを、色はミネラルの色、色が付いている程ミネラルが多い、
だから味も健康にも良いはずと思い込んでいます。
自然食品の普及で白米より玄米、白砂糖よりも三温糖、黒糖のほうが良い
だから塩も色がついている方が良いとの思い込みです。
雪と塩とウェディングドレスは汚れていなければ白いものです
C気取ったレストランの食卓にコショウと塩の二つのミルが置いてある
店があります。大粒の塩を岩塩に見立ててミルで轢く設定です。
コショウは引き立てが香りが逃げずおいしいのですが、塩は香りとほ無縁です。
単なるノスタルジア、時代錯誤、レトロ調です。
この塩で腹痛を起こす心配はありませんからとやかく言う筋合いではありませんが「私の店は塩については無知です」と言ってるのと同じです。
メニューに『鴨の岩塩包み焼き』などと書いてあることがありますから
注意してみてください、そのレストランのセンスと実力が分かります。
日本で一流と言われている料理人さんにも岩塩を礼賛している人が多いのですが、説明を聞いたらすぐ納得してくれる懐の広い人が多いのは嬉しいことです。
塩の質を選ぶ
●料理人の塩への讃辞
塩加減というのは、本当に難しいものです。ひと振りだけでも、料理を台無しにしてしまうことがあります。
そういうことから、塩に関してほむかしからプロの料理人がいろいろなことを言っています。
家庭でも参考になるものが多いので、次に列挙してみましょう。
「究極の味は塩から。味の決め手。味の起源。味の心棒」
「塩は味の基本、健康の基本。味は塩にあり」
「素材の持味、うま味を引き出すのが塩」
「素材を生かすも殺すも塩です。塩加減が狂うと、すべてが狂ってしまいます」
「料理は塩に始まり塩に終わる」
「塩あじがまっとうなら、すべての味がまっとうになる」
「塩の生かし方に芸が現れる」
「塩に厳しい人が一流になれる」
「塩の味がわかれば、本当のグルメだ」
「塩を知り尽くしたとき、其の料理人となる」
「塩振り三年」
「上板(年期の入った人)でなければ塩は持たせてもらえない。塩を使わせてもらえだしたときに、上板と尊敬される
「トンカツは塩で食べるのが美味しい」
「ステーキは塩がいちばん」
「エビのてんぷらには塩が合う。生きのいいエビの甘さが冴える」
「減塩の風潮が料理人をへっぴり腰にし、腕を鈍らせてしまう」
「味を殺してしまうはど塩を減らしては、元も子もない」
「私は砂糖がなくても料理は作れますが、塩がなければ引き受けません」
「今の味噌・しょう油ほ、塩が足りないので、塩を少し足しています。驚くほど味が締まります」
「塩を充分に使うと料理に力がでます。味に堂々とした風格が出ます」
「塩を制するものは食を制す」
「真夏はよく汗をかきますし、冬は寒くてトイレが近くなりますから、この季節には塩を多めに使います」
− いずれも、言い得て妙です。
しかし、これらの名言は、はとんどすべて味つけと塩加減に関するもので、
塩の質についてほ言及されていません。
これも、専売制によって塩に質などないと信じ込まされてしまった弊害かもしれません。
料理人がキチッと塩を使えは、塩の質の違いが味の違いとなって出てきます。
塩の質によって味は生かされも殺されもするのです。
美味しいと評判のお店、食べてみて「いけるな」と感心した店は、必ず良い塩をキチッと使っているものです。
私の知っている範囲で、いちはん熱心に塩の質と使い方を研究し、こだわり続けている人は、
大阪南船場のけつねうどん″元祖松葉屋のご主人、宇佐美辰一さんです。
この方は塩振り必殺仕事人″とでもいうべき料理人で、
塩を振るときの手のひねり方が右ひねり、左ひねり、外ひねり、内ひねりなどによって、
六種類の味を自由自在に操るのだそうです。
テレビで何度も実演されていますから、ご存じの方もたくさんいらっしゃるでしょう。
●塩選びは素材選びの原点
すべての素材には、品質の善し悪しがあります。
少しでも良いものを選ぼうと五感を総動員するプロが、
塩は塩辛ければなんでも同じだ″と疑うことをしないのは残念です。
素材にうるさい料理人のなかにも、塩はフリーパスというケースは少なくありません。
タバコに違いがあることを知っていても、塩の質に違いがあることはご存じないか、あるいは気にしない人がいます。
砂糖も、グラニューよりは三温糖が良いなどといわれます。
ところが、もっと微妙なものであるはずの塩加減、
これに使う塩という素材に無頓着では、出来上がった料理も違ってくるはずです。
ただし、最近になってようやく一部の料理人が塩を見直しはじめました。
こういう風潮は、ぜひ広がって、塩を素材として吟味することが常識になってほしいものだと思います。
「伯方の塩」などの自然塩は、一九七四年から売り出されています。
健康・自然食晶店、生協、一般のスーパーの店頭にも並んでいます。
売れ行きも悪くないので、家庭では自然塩が見直されて使われているということです。
こうした自然塩が料理飲食店や、漬物、味噌、しょう油、麺頼などの食品加工用に使われはじめたのは、
ごく最近でした。
以来、使う店が見る見るひろがっていくようです。
私は、手前味噌かもしれませんが、自然塩を使っている店のほうが美味しい店だと信じています。
良いレストランかどうかは、私はテーブルに置いてある塩をなめて判断します。
粒が小さくて、なめてみるとビリビリとただ辛いだけの精製塩の場合には、当然私の評価は落ちるわけです。
また、てのひらに塩をのせたときに、
粒の大きさが二種類あり、キラキラと輝いて、なめたときに少し甘味があるときは、
化学調味料の混じったものと思ってよいでしょう。
東京の有名なてんぷら屋さんでこういう塩に出会って、びっくりした記憶があります。
塩が主役、おすすめ一品
●ほかの調味料、塩との相性は?
日本人は一日に二〇グラムの塩分を取る、などといわれますが、
二〇グラムの塩を量ってお皿に盛り、いっべんになめるようなことはしません。当たり前の話です。
塩は、塩だけでなめると非常にしょっばいものです。
しかし、これを調味料としてうまく使うと、はかの味との素晴らしいシンフォニーを奏でるのです。
たしかに、本当の酒飲みは塩をなめながら日本酒を飲むなどといわれますが、
その場合にしてもお酒の味を引き立てる脇役に徹しています。
食べ物に関していえば、塩はど裏方に回った名脇役はいないのではないでしょうか。
己の姿を隠し、自己主張をせず、はかのうま味を立て、あるときはまったく反対の甘味を引き立てることもあります。
そういう名脇役を充分に使いこなしてこそ、キッチンのプロになれるというものです。
そこで、塩の分量の目安をお教えしておきましょう。
・ひとつまみ 約〇・六グラム
・ひとにぎり 約二五グラム
・小サジすり切り 約六グラム
・大サジすり切り 約一五グラム
・計量カップ(一八〇CC)すり切り 約二〇〇グラム
「塩を制するものは料理を制する」とか……。
まずは、調味料としての塩の特徴を知っておきましょう。
@甘味と塩あじの関係
甘いアンコを煮るときに、隠し味として塩を入れることは、むかしの主婦なら常識でした。
濃い味の煮物にも、醤油と砂糖の組合せが味の主役になっています。
こういう味は、やはりご飯のおかずとしてのお惣菜料理を作ってきた日本の家庭料理ならでは、
といえるのではないでしょうか。
女子栄養大学助教授の松本仲子先生が、この塩あじと甘味のバランスについて次のように
教えてくれ
(やさしい味) (しっかり味) (濃い味)
ニンジングラッセ さといも煮ころがし しいたけ含め煮
塩分 糖分 塩分 糖分 塩分 糖分
〇・五 ― 一・五 一・五 − 五 三・〇 一 一〇
卵とじ
一・二 − 五
このバランスは、お袋の味のバランスです。
お袋たちは、この微妙なバランスを毎日の台所で経験的に覚え、
勘だけで見事に素晴らしい味を作ることができたのです。
このバランスがくずれると、どうしても私たち日本人の口には合わなくなってしまうのでしょう。
表を見ると、濃い味からやさしい味まで、塩対砂糖の割合はそう変わらないようです。
これらの料理はもちろん、いろいろな料理で砂糖と塩のバランスや相性について、
ご自分でも確かめてみることをお勧めします。 きっと、台所のプロに一歩近づくことでしょう。
Aすっぱ味と塩あじ
日本には酢という古くからの調味料があります。これも、塩とともに非常によく使われます。
純日本的な料理で、酢と塩できわめて簡単な調味を施したものといえは、お寿司です。
米一カップに対して、酢を大さじ一・五杯、塩を小さじ二分の一杯を混ぜ合わせて寿司用の酢ができます。
この塩分濃度は八%にもなるのですが、とくに塩辛く感じません。
ちなみに八%の塩分濃度というのは佃煮と同じで、すまし汁は一%です。
要するに、すっぱ味は、塩あじを弱めるはたらきをするのです。
梅干しの塩分濃度は二〇%にもなるものがありますが、
味はしよつばい≠ニいうよりもむしろすっぱい″はずです。
すっぱ味というのほ、それほど強い主張があるわけで、
これが塩あじや、砂糖と塩あじが重なった味をまろやかにしてくれるのです。
また、逆のこともいえます。
すっぱすぎる夏みかんなどに塩をかけて食べることもありますが、
これは塩あじがすっぱ味を緩和させるからです。
適度なすっば味と塩あじは、互いに薄め合う関係にあると考えておけばよいでしょう。
味をととのえるときに、塩加減ほど難しいことはありません。
ちょうど良い加減の幅がきわめて小さいためです。
少しでも入れすぎると、しよつばすぎて、はじめの一口は良いとしても、
最後まで食べるうちにイヤになってしまうものです。
煮物やお吸物で、ちょっと味が濃くなってしまったと思ったら、酢をはんの数滴加えてみましょう。
多少、味は濃厚な感じになりますが、それなりにととのうようになります。
ただし酢は非常に効くので、ごく少量ずつ入れて味の変化を確認しながら調味してください。
Bうま味と塩あじ
うま味というのは、簡単にいえばだし汁″の味です。
昆布、かつおぶし、貝など、あっさりした魚介類から出るエキスは、日本の味のうま味の正体です。
中華料理や西洋料理では、鶏ガラや野菜などから出る濃厚なうま味を利用します。
化学的に分析して、合成的に調味料にしたものが、化学調味料といわれるものです。
きちんとだしを取らなくても、だれでも似たような味ができますが、香りは出せません。
本物の だし汁には遠く及ばないのは当然のことです。
自然のうま味というのは、成分だけで取り出すことができないからです。
これは、化学的に作られたイオン塩がまずいのと同じことだと思います。
閑話休題。
だし汁はうま味≠ェたくさん入っているとはいっても、
そのまま飲んでも決して美味しいスープにほなっていません。
なんとなく香りのする、頼りないお湯という感じです。
ところが、このだし汁をお椀につぎ、塩をひとつまみ入れてみてください。
うま味成分が塩によって息を吹き返したように、素晴らしい味になります。
もう一つ例を考えてみましょう。
たとえば、ホウレンソウのおひたしのように、それ自体はうま味をもたないようなものには、
あまり多くの醤油は付けたくなくなります。少しの醤油で充分に味が感じられるからです。
ところが、刺身の場合には、たっぷり付けてもそう塩辛い気がしません。
とくに、中トロなどには、かえって醤油の付け方がたりないとものたりない感じになります。
これも、刺身に含まれるうま味と塩あじの相性を示しています。
うま味が塩あじを求めるから、うま味の含まれる刺身には醤油が合うのです。
ところがホウレソソウにはうま味がないので、醤油の味がストレートに感じられてしまうというわけです。
ホウレンソウのおひたしには、よくかつおぶしが振り掛けられています。
かつおぶしと醤油と和えてあるものもあります。
これらは、うま味と醤油の塩あじとのバランスをつけて、美味しく食べようという知恵なのです。
●素朴な「炊き込み塩ご飯」はいかが
塩の味は、素人の方にほなめただけではわかりにくいかもしれません。
しかし、すまし汁にすると一目瞭然です。
だし汁との相性だけで塩の味を味わえるのですから、塩の差が出やすいわけです。
もう一つは、おにぎりでしょう。
塩とご飯の相性もなかなかのものですから、ごまのおにぎりにして塩を味わってみてください。
おにぎりというのは、塩をのせて″使う調味法です。
ご飯のなかにしみ込ませるのではなく、表面に塩をかけて食べる感覚です。
こうすると、塩あじが強く感じられます。
試しに、おにぎりを作るときに塩の量は同じにして、
一方はてのひらにお塩を付けて握り、
もう一方はあらかじめ塩とごほんを混ぜてから握ってみましょう。
この二つのおにぎりを食ベ比べてみると、てのひらに塩をしたほうがしょっばく感じられると思います。
あらかじめ塩とご飯を混ぜたものは、全体に薄い塩あじがただよった味つけご飯のような感じで、
ものたりないかもしれません。
あらかじめ塩とご飯を混ぜたものほ、いわゆるしませる味″であって、
てのひらに付けたはうはのせる味≠ニいうわけです。
野菜の煮物や漬物などはしませる味の代表で、トマトやてんぷらなどにかけて食べる場合ほのせる味になるわけです。
これほそれぞれの料理によって異なるわけで、オーソドックスなおにぎりはふつうのせる味で食べるわけです。
しかし、炊き込みご飯などをおにぎりにした場合には、
ご飯を炊いたときに塩分をしませたわけですからしませた味になります。
おにぎりの場合、どちらが好きかは好みになるでしょうね。
では、塩をしませた味で、塩あじを味わうシンプルな料理もご紹介しましょう。
塩の味つけご飯です。これは、ご飯を塩にまぶすだけでなく、炊くときから塩水で炊いてしまおうという魂胆です。
炊き込みご飯は、あまり塩辛いと飽きてしまいます。
主食ですから、すまし汁よりも薄い〇・五%くらいの調味が適当です。
●塩あじがわかるだし汁″ のバリエーション
日本のすまし汁は、まずほかつお節と昆布です。
@作る量より少し多めの水に昆布(一〇センチ×一五センチくらいの大きさ)を入れ、中火にかけます。
A充分に沸騰したら、一杯分一〇グラム程度のかつお節を入れ、ふたをして火を止めます。
五分後にもう一度火をつけ、再び仰騰する寸前で止めてから、同じように五分ほど置きます。
B昆布とかつお節を布巾でこして、出来上がりです。
これに、一%くらいの塩を加えればすまし汁になりますが、
いちいち計算して量るのではなく、自分の舌の感覚で覚えてしまうことをお勧めします。
これに味噌を溶かし込めば味噌汁になりますが、
味噌汁の場合には昆布を多め、かつお節を少し少なめにすると味噌の香りが引き立つように思えます。
また、だし汁をとるときに、かつお節を入れてから一分から二分は弱火で煮ます。
しかし味噌汁を作るときに最も大切なのは、味噌は煮ないということです。
だし汁を充分に沸騰させたら火を止め、すぐに手早く味噌を溶かしていただくのが山美味しいのです。
味噌を入れて沸騰させてしまったものせ比べると、驚くはど味が違いますから、試してみてくださ。
最近は甘口の味噌が多いようですが、
そういう場合には味噌をちょっとものたりない程度に少なめにして、少量の塩を加えるとシャンとした味になります。
美味しいだし汁ができるようになれば、料理の基本がわかったことになります。
この要領を生かしていろいろとチャレンジできる勇気もわき、また楽しみにもなってくるほずです。
こうなると、料理もなかなか楽しいものです。
簡単な応用編としては、うどんやそばのお汁を作るというものです。
だし汁に、お酒、みりん、水少々を加え、一分くらい中火で煮立たせます。
お酒やみりんは味をよくしますが、アルコール分をとばすために油仰騰させるのです。
これに、塩、醤油、少量の酢で味をととのえるのです。
このお汁に、ゆでたうどんやそばを入れれば、立派な一杯のかけそば(かけうどん)になるわけです。
もう少しお袋の味っぼくするなら、大根やニンジンを加えましょう。
だしを取った昆布をだし汁に戻し、少し水を加え、
沸騰したらいちょう切りにした大根・ニンジンを入れて柔らかくなるまで煮ます。
沸騰したら、同じように酒とみりんを適当に加えます。あとは同じです。
大根は厚め、ニンジンは薄めに切ると同じ時間に柔らかくなるでしょう。
また、もっと濃厚なこってりした殊にしたければ、ころ合いの挽き肉を野菜と一緒に適量入れてみましょう。
この場合には醤油味が合うので、前述のように酢を使いながら、濃いめの味に仕上げると美味しくできます。
●妙めものには、塩加減に要注意
油をたくさん使う料理に塩加減するときは、ちょっと注意してください。
油料理は、素材のまわりが油にまみれますから、塩あじが浸透していきません。
つまり、典型的なのせる味″となるわけです。
ということは、煮物などの感覚で塩をたしていくとしょっばくなりすぎて、思わぬ失敗を犯してしまうわけです。
てんぷらは塩で食べるのもサッパリと美味しいものですが、少量をつけてもかなり塩あじが効くはずです。
これも、塩が油に溶けないからなのです。
妙めものは、強火で時間との勝負という慌ただしい料理になりますが、
そこでエイヤッと適量の塩を振れるように、あらかじめ入れる分量を容器に別にしておくべきかもしれません。
炒めながら、塩を取りにいくようではいけません。
少量の塩あじだけでも美味しいのですが、
酒、みりん、酢などの調味料との相性を利用するとより美味しくなります。
そういう場合には、はじめから入れる調味料の分量を合わせておくと素材を無駄に熱してしまう心配がありません。
キャベツ、シイタケ、サヤエンドウ、むきエビ、イカ、チソゲンサイ、モヤシ、豚肉などなど、
冷蔵庫に余っているものを適当に整理するにはもってこいでしょう。
●気軽にもんでみよう、塩と野菜
塩を使ったカンタソ料理といえば、キュウリもみです。
夏の食欲のないときなどほ、キュウリやナスを塩でもんだだけのものが妙に美味しく、
ビールもすすむというものです。
ただし、最近はキュウリもナスも一年中ありますが、
やはり夏場に食べるのが美味しいということをお断りしておきます。
キュウリの塩もみ
キュウリは、ななめに薄切りにします。太いものは、たて半分に割ってからスライスしてください。
これをボウルに入れ、少し多いかなと思う程度の塩を入れ、
少量の水(カップ一杯程度)を入れて指先で軽くもみます。
紫蘇の菓をみじん切りにして置いておき、署荷はスライスにして塩水につけておきます。
もんだキュウリは、▲食べてみてし上つばいと思ったら、サツと水で淡いま一す
簡単に水を切ったら、みじん切りの紫蘇とスライスの著荷を合わせればできあがりです。
お好みで、タマネギのスライス(塩水に充分にさらす)、ピーマンの千切り、
ショウガの千切りなどを少し加えてもいいでしょう。
ナスの塩もみ
ナスは、へたを取ってたてに割ります。
割れた平面を下にしてまないたに置き、漬物を切るように三ミリくらいの厚さで斜めにスライスします。
これをボウルに入れて、キュウリもみと同じように多めの塩とカップ一杯くらいの水を加えてもみます。
水の色が真っ黒になったらザルにあけ、水洗いすれば出来上がりです。
キュウリのときと同じように、薬味を加えると美味しくいただけます。
また、ナスの場合にはレモンの絞り汁を少量たらすと、塩あじとナスの風味がより引き立ちます。
カブの塩もみ
カブは、二、三ミリにスライスします。
大きいかなと思ったら、例によってたてに半分に割ってからスライスするとよいでしょう。
葉や茎の部分も、二センチくらいに刻んで一緒に食べます。
カブの葉は大根の葉ほどは固くありませんから、ゆでるまでもありません。
生に近いものをガシガシと食べるのもまた、うまいものです。
固いものが嫌いなら、サッと熱湯にくぐらせる程度で適当な柔らかさになります。
これも、同じように塩もみします。
ゆずを混ぜるとか、左党なら鷹の爪を少しみじん切りにします。
海苔に巻いて食べると美味しい、という人もいれば、ショウガ醤油が合うという人もいます。
その人なりに気ままに楽しむのが、料理上手の第一歩だと思います。